リニューアルの
小さなこだわり

リニューアルのこだわり
 その1

リニューアルした診察室には、開業時からの家具たちも現役で使われています。 若かりし父がこだわって作ったキャビネット。 細かく設定された引き出しの深さや、可動式のカート。 これまで当たり前に使っていたものに込められた工夫を 再確認しながら、補修をし、新しい場所に設置しました。 これからもまだまだ現役で大切に使っていきます。

リニューアルのこだわり
 その2

これは改装をすることを決めて準備をし始めていた2017年の夏に私がとった写真ですが、 父の撮った写真を整理していると、これまでに何度も改装を重ねて来たことを改めて実感しました。 改装前にも、古くからの患者様が、ここは綺麗だからすき、と何人も言ってくださいました。 わたしにとっては、ここが当たり前になってしまっていたのでぴんと来ませんでしたが、 確かに43年もたっている割にはとても綺麗に保たれています。

どの引き出しを開けても、いらないものがぎゅうぎゅうに入っていることはありません。 掃除機が行き届かないところもほとんどなく、 壁際の床にものが置いたままになっていることはなく、 40年以上使っている道具のほとんどが現役。 それは、父はもちろん、これまでにここで働いてくれた人たちが大切に使って来てくれたからです。

毎日の掃除、毎月の掃除、毎年の掃除。 学生の頃に医院で時々アルバイトをしていたこともあり、掃除の手順は身についていて 毎年の大掃除は家族総出でする年中行事だったので、全てが当たり前のルールでしたが、 改めて考えると、これは父が培って来た歴史で文化なのだ、と気づきました。

これまでに努めて来た大きな病院では、たくさんの人が働いているのでどうしても行き渡らないことがありましたが、 小さな医院だからこそできることがあることに気づいた瞬間でした。

改装をお願いした設計士さんは、前に勤めていた医院の設計の時から10年以上の知人なので そんなエピソードも話しながら、私たちは変えるべきところ、残すべきところをひとつひとつ 積み上げていきました。

患者さんにはお見せすることはほとんどありませんでしたが、 私は改装前の技工室がとても好きでした。 必要なものがきちんと使われて、きちんとしまわれている 小さくて古くてかわいい技工室でした。 昭和の古いキッチンのようですが、43年ずっと使われて来たにしては きれいな技工室です。

父は2008年に大きな改装をしています。 同世代の人たちでその年に改装をした人はいないと思います。 昭和のテイストを一掃して、生まれ変わった改装でした。 そのころ私は大学院を卒業して、修行のために大阪の医院に勤め始めたところで、 家を離れ忙しくしていたので、改装をする、と聞いた時は驚いたことをよく覚えています。 その時の改装のおかげで、昭和のテイストが払拭されて、清潔感も保たれていたと思うのですが、 技工室は改装をしないでいたのでそのまま。

上の写真は多分1980年代の技工室。 そして下の写真は2018年2月。 ちょっとものが増えていますが、基本的には何も変わりません。 (そして同じ石膏入れがあります!これは改装後も使っています)

今回の改装で、技工室だったスペースは父の書斎兼事務室になりましたが 私はこの技工室がとても好きだったので、この整った雰囲気や文化を なくしたくない、と設計士さんに伝えて 新しい準備室、そして診療室を作っていきました。

リニューアルのこだわり
 その3

歯医者さんが好きな人は少ないと思います。 みなさんきっとどちらかというと苦手なはず。 待ってる間も、決して楽しくはないと思うので せめてすこし居心地よく、、、と思っています。

歯医者さんらしくなくっていいはず!と、固定概念をいろんな人の力を借りて払拭し、 歯医者さんらしくない受付と待合へとリニューアルしました。

父の写真、私が好きな本、好きな香り、北欧や日本の雑貨を飾っています。 お待たせしないように、と心がけていますが、 帰りたくなくなる待合になったら嬉しいなあ!と願いながら作りました。

待合においてある椅子は1975年の開院のときからある椅子。 緑のいすはずっとこの医院にあって、トレードマークのような存在です。

この写真でも窓際に写っています。 飛騨家具だそうで、無垢の木を使ったちょっと大きめのチェア。 43年間、ずっと日当たりのいい窓際で使ってきたので、 色褪せも激しく緑色も独特。 新しい空間には合わないかもしれないけれど、 わたしはどうしてもこの椅子を待合に使いたかったのです。

そこで自分でがんばって塗装を剥がし、新しい空間にあう椅子へと変身させました。 椅子の塗装を剥がすのは、想像以上に大変な作業でしたがそれもこれもいい思い出。 いろんな人に相談にのってもらいながら、医院を改装している間に毎日少しずつはがし取り、 改装工事のために来ている塗装屋さんに手伝ってもらってオイル仕上げをしてもらい完成!!! 子供の頃からずっと親しんで来たこの椅子が待合にずっといてくれるのは わたしにとってもとても心強いことです。

リニューアルのこだわり
 その4

待合にあるコート掛け。 これも開院のときからあるもの。 父の父、つまり祖父のお友達の金工作家さんが父へ開業祝いとして作ってくださったものです。 改装のたびに付け替えて、その度に上下逆になったりしてきましたが、 この度(おそらく)正しい向きで付け直しました。

父方の祖父も歯科医師でした。 私が生まれる前に亡くなったので、会うことはできませんでしたが こうして父方の祖父のゆかりのものを続けて使うことができてうれしいなあと思っています。